M2の推移のグラフを通常の目盛りと対数目盛りで作ってみた

https://docs.google.com/spreadsheet/ccc?key=0ApjlRqGYAadXdGlkcHlRVDdMODJtUFY1b1ZlcWlXdEE#gid=0

ツイッターでの議論でM2のようなデータは通常の目盛りで水準をプロットするのではなく、対数目盛りを使うか、変化率でプロットすべきだという話をいたしまして。で、同じグラフを通常・対数の両目盛りで実際に作図してみたのが上のグラフです。

よく、せっかく作図してツイッターやブログで披露しても、どういうデータをどう加工したのか分からないグラフがあるんですよね。私はそういうのいやだなー、と思ったので、まあめったにやらないのですが、自分で作図して披露するときはGoogleDocsでデータ・計算ごと全部公開するようにしてます。

極論、ケアレスミスで結果のグラフが不正確になってたりしても誰かが指摘してくれるかも知れないわけで。グラフだけだと「信じるか信じないか」の二択になっちゃいますよね。

データ引用元は、毎度お世話になっている日銀の統計データダウンロードサービス。ちゃんとデータ系列のIDも残しているので、分かりやすいシート設計とは言いがたいですが(笑)、表計算の内容をチェックすればどう作図したかは追える、はずです。

M2の統計は何回か計算方法を変更してるので、そこをどうするかが本当は悩みどころのはずですが、目的が目盛りの使い分けを示すことだったので、「えいや」で適当に(笑)。ご容赦ください。

ハイパーインフレとは?

ハイパーインフレ」という言葉もずいぶんアレゲに使われているようなので覚書しておく。

なんだか結構昔の学者さんが定義したところによると、ハイパーインフレというのは月率50%以上、年率で13,000%以上のインフレのことを言うのだそうである。ゼロの数は間違いじゃないですよ。いちまんさんぜんパーセント、です。確かにうほほーいですな。

一次情報に当たってないので推測だが、50%というきりのいい数字から考えて、月率のほうが厳密な定義ではないかと推測する。月率50%を年率に直すと、

(1.5^12) ≒ 129.75

129.75 × 100 − 100 = 12875% ≒ 13000% (有効数字2桁)

Wikipedia先生などによると、この定義でのハイパーインフレが発生したのは歴史上3回。ドイツ・ハンガリージンバブエの例だそうである。アルゼンチンでもかなりひどいインフレが発生したが、上記の数字には届いていない。日本で発生した戦争直後のインフレや石油ショック・狂乱物価などと言われたインフレももちろん届いていない。

一方、世間ではハイパーインフレという言葉はもっと緩く使われているようだ。「ハイパー」という言葉の響きが素晴らしいからか、とんでもない高インフレ、というくらいの意味で使ってしまう人が沢山いる。しかし実際のところどうなのよと。日本経済がハイパーインフレになるぞという主張があったら、それが年率13,000%以上のインフレのことを指しているのか、指しているとしたら定量的な根拠があるのかどうかは確認しておいたほうがいい。そしてそうでない意味で使われているのだとすれば、一体どの程度のインフレ率を指して「ハイパー」と呼んでいるのか確認したほうがいい。と思う。ハイパーに届かなければ問題ない、などと言う気はもちろんないが、何を持って破局とみなすのかについて、まず確かめないと意味がないだろう。

通貨発行益について覚書

通貨発行益(seignorage:シニョレッジ)というものについてなんだか色んな話がWeb上にもあってややこしい。ということでまとめておくことにした。しかしちゃんとした一次資料にあたってないので、あくまで覚書ね。

政府が10年もので金利1%の長期国債を10,000円で売ったとしよう。この場合の金利は年利であり、利息は半年ごとに払われる。つまりこの国債を買った主体は10年にわたって半年ごとに50円ずつ利息を受け取り、償還期限の10年目が来たときに最後の利息といっしょに10,000円が戻ってくることになる。現在の日本では、国債の典型的な買い手は国内の金融機関である。

金融機関が買ったばかりのタイミングで、この国債を日銀が買い切ったとしよう。このときの購入価格は、実際には10,000円以上、11,000円以下のいくらかになるだろうが、とにかく日銀と売り手で同意がとれれば後の議論には関係ない。

この国債は日銀の所有となり、償還期限が来るまで政府が日銀に利息を払うことになる。しかし規則の定めるところにより、日銀の保有する資産から発生する利益は手数料的なわずかな金額を差し引いた後で国庫に納入される。つまり、実質上、利息分が棒引きになる、ということだ。

そうすると、国債を発行する際に立てる、利息を含めた返済計画のうち、利息分が浮くことになる。これを通貨発行益と呼ぶ。

また、償還期限の来た国債は、日銀が政府に償還を要求することになる。しかしこれは政府日銀の同意の下、借り換えを行ってもいい(償還要求そのものを行わずに保有し続けてもよさそうだけど未確認)。借り換えを行っている間は、元本の10,000円も返さなくてもいい。これを含めて通貨発行益と呼ぶこともある。

正式な定義がどちらなのかよく分からないが、どちらの用法も世間にあるようなので、まずはいちいち確認するのが建設的と考えている。

ぷりりん氏に法的な手段をとられたらめんどくさいなあ、の件

ブログなるものを始めてしばらくしてからツイッターを始めたらそちらが面白かったのでずっと放置していた。しかしツイッター上での議論にちょっと長めのお返事をしようということで久しぶりに。

@pririnsoccer さんは、ツイッター上のリフレ関連タグの常連で、リフレには疑問を呈する立場の発言をしている。それはいいんだけど、知識やロジックが全くダメなのにそれを自覚せずに、間違いに基づいた主張を繰り返す。知識がないならまず勉強するか、自分の知識が不確かであることを前提にして慎重な姿勢をとればいいのに、知識もロジックもトンデモないのに色々言い切る、いわゆる「ウンコな議論」を量産する「ダメ論者」なのである。

で、彼の人がそうであることにはもう諦念を抱いているのであるけど、タグの読者のうち経済知識がさほどでない人が色々誤解をするといけないので間違いを指摘するときに、時々意識的にコテンパンな言葉を使うことにしている。建設的な議論なら自分やみんなの知識や考えを深めるのに有益なのであるが、彼の人を批判する書き込みは別にそういう効果は期待していない。デマをデマであると読者に明示した方が、タグの言論の場としての機能を保てるのではないかと考えているだけだ。

しかし彼の人はコテンパンにされることが不満らしく、私に対してメンションで「.@ito_haru 司法の場で徹底的に争いましょう」「.@ito_haru 準備して待ってろ!!」などとおっしゃるのである。
http://twitter.com/pririnsoccer/status/24959177557
http://twitter.com/pririnsoccer/status/24959472052

●経緯

今回の話の発端は、@kendochorai さんの以下の発言だった。
量的緩和が為替に影響しないなら、どうやって国際金融のトリレンマ達成するんだよw固定相場制はダメ、物価の安定はダメ。自由な資本移動しかできないってなんじゃそりゃw #defle #デフレ危機_」
http://twitter.com/kendochorai/status/24937893803

これに対して彼の人が、以下のように批判を行った。
国際金融のトリレンマは1.自由な資本移動2.固定相場3.独立した金融政策で物価の安定は関係無いです #defle #デフレ危機_ RT @kendochorai」
http://twitter.com/pririnsoccer/status/24940208373

私はこの批判は当たっていないと考え、恐らく彼の人はトリレンマの中身を正しく理解していないのだろうと考えて以下のように続けた。
「捲土さんは間違ってないと思うな。ここで言う金融政策ってこの場合自国通貨量調節≒物価の安定のことでしょう QT @pririnsoccer 3.独立した金融政策で物価の安定は関係無いです #defle #デフレ危機_ RT @kendochorai」
http://twitter.com/ito_haru/status/24949223518

そこから何度かのやりとりを経て、上の「司法の場で」発言に至るのである。

裁判沙汰とか大変恐ろしいので(笑)、今回特別サービスとして金融政策のトリレンマに出てくる金融政策の独立性と、中央銀行の独立性はまるきり別のことであるということをご説明申し上げる。彼の人に理解をしてもらうことができればそれはそれでいいのだが、それとは別に、一回まとめて記事にしておくと彼の人側の間違いが明確になるので、このブログ記事を引用するだけでタグ読者に彼の人のダメ論者ぶりを明示できるという効用も期待している。

中央銀行の独立性とは

まず簡単な方から。多くの国では通貨量の調節をする中央銀行と政府を別組織にして、政府が財源として通貨の発行を要求しても中央銀行は必ずしも従わなくていいことにしている。これは、政府与党が無茶な政策のために国民に高すぎるインフレを押し付けることに対して歯止めを設けているのである。
中央銀行はインフレ率を適正に保っていれば政府の言うことを聞く必要はない。政府は法律を変えたり、インフレ率目標を非常に高く設定して言うことを聞かせることは可能だが、それをしようとすればさすがに国民の目に付くだろう。

●金融政策の独立性とは

国際金融のトリレンマに出てくる「金融政策の独立性」というのは全く別の話だ。若干長くなるけど、特別難しい話ではない。先のように、同じ国の政府と中央銀行の問題ではなく、A国がB国の経済状況とは関係なく金融政策を行えるかどうかという話である。

(※以下、国際的な資本移動は自由であるという前提で話を進める。ちゃんとお勉強したい人は自由だったり自由でなかったりしたときにどうなるか確認してください)

円を米ドルに対して固定することにしたとしよう。レートは1ドル=100円。先日まで1ドル=100円で牛肉は100g買えたのだが、米国が通貨を増発してインフレを起こし、1ドルで90gしか買えなくなったとする。この場合円も増発して減価させ、100g100円でなく90g100円にする必要がある。そうでなければ1ドル=100円(=牛肉90g)という等式が成立しなくなり、固定相場が維持できなくなる。

このように、固定相場制を取った場合、インフレ率はおおむね同じくらいにする必要があり、米国はインフレだが日本はデフレにするといった自由度・独立性は失われる。こちらが国際金融のトリレンマに登場する「独立性」の意味である。国家間の独立性だから、一国の内部の問題である政府・中央銀行の関係とは全く別の話なのだ。

ちなみに国際間の独立性がない場合について、Wikipediaではユーロ圏を例に出している。ユーロ圏の各国では同一貨幣ユーロを採用しているのだから、これは究極の固定相場制だ。国ごとにもちろん若干の温度差は生じるが、フランスはマイルドインフレだけどギリシャハイパーインフレ、などということはありえない。だからギリシャは自国の経済危機に際して、自国独自通貨を増発するという対策は(是非はともかく)選択肢としてとれない、ということになる。

説明は終了。

●最後に

ということで、彼の人が「では、無関係である説明をしてください #defle #デフレ危機_ RT @ito_haru しかしトリレンマに出てくる独立と中銀の政府からの独立を混同してるってw ワロタw」とおっしゃるご要望にはお答えした。彼の人がこの説明を理解できるかどうかは自信がないが(笑)。
http://twitter.com/pririnsoccer/status/24964179234

何度も言うが、自分が分かっていることと分かっていないことを区別した上で知的に誠実な発言を彼の人にはお願いしたいのである。しかしそれをやってもらえないのであれば、タグの読者向けに発言の問題点を示し続けるだけだ。

クロストークが相互投票を始める件

毎日.jpのクロストークだが、今回からコメント投稿者による相互投票をやるとのこと。おいらがコメントで提案したことだけど、おそらく同案は多数でしょうな。誰でも考えること。
今回のテーマの贈与税は特別強く主張したい持論は無いけど何か書いてみるか。まあその程度の投稿じゃあ票はもらえなさそうだけど。

コメント下さい

ページビューのカウントは一応増えてる。自分でリロードしている回数よりカウントのほうが多いのでアクセスがあるのは確か。でもググル先生その他のクローラもかなり含まれていると思われます。人間は読んでるのかしら。一人でもいいから、読んでるよーってコメントしてくれたらもれなく愛を差し上げます。ほんのちょっとの愛。

「政治に知恵集める仕組みを」に投稿

勝間和代のクロストーク「政治に知恵集める仕組みを」に投稿しました。締め切りギリギリになってしまったので他の方からの反響は期待できなさそうですね。反省。

http://mainichi.jp/select/biz/katsuma/crosstalk/2009/12/post-34.html
42番目の投稿
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締め切りギリギリになってしまいましたが、ネットについて大局的な話をちょっと。

明治維新は150年程前の出来事ですが、それ以前の日本人にとって現在の政治体制は全く想像もつかないものでしょう。政治に限らないことですが、想像もつかない結果をもたらす革命的現象というのはいくつもあります。人類史の中で、次に起こる政治体制革命はどんな内容で何年後に何がきっかけで起こるか。予想するのは難しいですが、きっかけになりうるものとしてインターネットはかなり有力な候補だと思います。

政治はそもそもメディアと関係の深いものです。例えば民主主義は有権者に投票の参考にするための情報が行き渡らないと成り立ちませんが、そのためには文字というメディアが不可欠で、そのために文字の読み書きを教える初等教育が必須です。これは明治の日本でもそうでしたし、一部の途上国では現在形の課題ですね。そして新聞やテレビなどのメディアの政治に関する重要性も言わずもがなです。

そしてインターネットは明らかにメディア界の超スーパールーキーです。(1)時間と空間の制約の解消、(2)高速で安価、(3)全員が情報発信可能、(4)検索集計整形翻訳などの機能、などどれをとっても従来メディアを大きく引き離しています。実際、登場からたった40年(ARPAネットを起点として)でここまで急速に普及したメディアは人類史上例を見ません。このようなメディアが政治に変化をもたらさない未来のほうがよほど予想不可能です。

議会制も民主主義も含め、現在の政治制度が未来永劫とはとても思えません。根本的な変化が起きようとしているのです。未来を予想し、未来を作りましょう。ちょうど坂本竜馬がブームですが、幕末・維新の時代に活躍した人たちは実際にそういうことをやってきた人たちだったわけです。どうでしょうか。