ぷりりん氏に法的な手段をとられたらめんどくさいなあ、の件

ブログなるものを始めてしばらくしてからツイッターを始めたらそちらが面白かったのでずっと放置していた。しかしツイッター上での議論にちょっと長めのお返事をしようということで久しぶりに。

@pririnsoccer さんは、ツイッター上のリフレ関連タグの常連で、リフレには疑問を呈する立場の発言をしている。それはいいんだけど、知識やロジックが全くダメなのにそれを自覚せずに、間違いに基づいた主張を繰り返す。知識がないならまず勉強するか、自分の知識が不確かであることを前提にして慎重な姿勢をとればいいのに、知識もロジックもトンデモないのに色々言い切る、いわゆる「ウンコな議論」を量産する「ダメ論者」なのである。

で、彼の人がそうであることにはもう諦念を抱いているのであるけど、タグの読者のうち経済知識がさほどでない人が色々誤解をするといけないので間違いを指摘するときに、時々意識的にコテンパンな言葉を使うことにしている。建設的な議論なら自分やみんなの知識や考えを深めるのに有益なのであるが、彼の人を批判する書き込みは別にそういう効果は期待していない。デマをデマであると読者に明示した方が、タグの言論の場としての機能を保てるのではないかと考えているだけだ。

しかし彼の人はコテンパンにされることが不満らしく、私に対してメンションで「.@ito_haru 司法の場で徹底的に争いましょう」「.@ito_haru 準備して待ってろ!!」などとおっしゃるのである。
http://twitter.com/pririnsoccer/status/24959177557
http://twitter.com/pririnsoccer/status/24959472052

●経緯

今回の話の発端は、@kendochorai さんの以下の発言だった。
量的緩和が為替に影響しないなら、どうやって国際金融のトリレンマ達成するんだよw固定相場制はダメ、物価の安定はダメ。自由な資本移動しかできないってなんじゃそりゃw #defle #デフレ危機_」
http://twitter.com/kendochorai/status/24937893803

これに対して彼の人が、以下のように批判を行った。
国際金融のトリレンマは1.自由な資本移動2.固定相場3.独立した金融政策で物価の安定は関係無いです #defle #デフレ危機_ RT @kendochorai」
http://twitter.com/pririnsoccer/status/24940208373

私はこの批判は当たっていないと考え、恐らく彼の人はトリレンマの中身を正しく理解していないのだろうと考えて以下のように続けた。
「捲土さんは間違ってないと思うな。ここで言う金融政策ってこの場合自国通貨量調節≒物価の安定のことでしょう QT @pririnsoccer 3.独立した金融政策で物価の安定は関係無いです #defle #デフレ危機_ RT @kendochorai」
http://twitter.com/ito_haru/status/24949223518

そこから何度かのやりとりを経て、上の「司法の場で」発言に至るのである。

裁判沙汰とか大変恐ろしいので(笑)、今回特別サービスとして金融政策のトリレンマに出てくる金融政策の独立性と、中央銀行の独立性はまるきり別のことであるということをご説明申し上げる。彼の人に理解をしてもらうことができればそれはそれでいいのだが、それとは別に、一回まとめて記事にしておくと彼の人側の間違いが明確になるので、このブログ記事を引用するだけでタグ読者に彼の人のダメ論者ぶりを明示できるという効用も期待している。

中央銀行の独立性とは

まず簡単な方から。多くの国では通貨量の調節をする中央銀行と政府を別組織にして、政府が財源として通貨の発行を要求しても中央銀行は必ずしも従わなくていいことにしている。これは、政府与党が無茶な政策のために国民に高すぎるインフレを押し付けることに対して歯止めを設けているのである。
中央銀行はインフレ率を適正に保っていれば政府の言うことを聞く必要はない。政府は法律を変えたり、インフレ率目標を非常に高く設定して言うことを聞かせることは可能だが、それをしようとすればさすがに国民の目に付くだろう。

●金融政策の独立性とは

国際金融のトリレンマに出てくる「金融政策の独立性」というのは全く別の話だ。若干長くなるけど、特別難しい話ではない。先のように、同じ国の政府と中央銀行の問題ではなく、A国がB国の経済状況とは関係なく金融政策を行えるかどうかという話である。

(※以下、国際的な資本移動は自由であるという前提で話を進める。ちゃんとお勉強したい人は自由だったり自由でなかったりしたときにどうなるか確認してください)

円を米ドルに対して固定することにしたとしよう。レートは1ドル=100円。先日まで1ドル=100円で牛肉は100g買えたのだが、米国が通貨を増発してインフレを起こし、1ドルで90gしか買えなくなったとする。この場合円も増発して減価させ、100g100円でなく90g100円にする必要がある。そうでなければ1ドル=100円(=牛肉90g)という等式が成立しなくなり、固定相場が維持できなくなる。

このように、固定相場制を取った場合、インフレ率はおおむね同じくらいにする必要があり、米国はインフレだが日本はデフレにするといった自由度・独立性は失われる。こちらが国際金融のトリレンマに登場する「独立性」の意味である。国家間の独立性だから、一国の内部の問題である政府・中央銀行の関係とは全く別の話なのだ。

ちなみに国際間の独立性がない場合について、Wikipediaではユーロ圏を例に出している。ユーロ圏の各国では同一貨幣ユーロを採用しているのだから、これは究極の固定相場制だ。国ごとにもちろん若干の温度差は生じるが、フランスはマイルドインフレだけどギリシャハイパーインフレ、などということはありえない。だからギリシャは自国の経済危機に際して、自国独自通貨を増発するという対策は(是非はともかく)選択肢としてとれない、ということになる。

説明は終了。

●最後に

ということで、彼の人が「では、無関係である説明をしてください #defle #デフレ危機_ RT @ito_haru しかしトリレンマに出てくる独立と中銀の政府からの独立を混同してるってw ワロタw」とおっしゃるご要望にはお答えした。彼の人がこの説明を理解できるかどうかは自信がないが(笑)。
http://twitter.com/pririnsoccer/status/24964179234

何度も言うが、自分が分かっていることと分かっていないことを区別した上で知的に誠実な発言を彼の人にはお願いしたいのである。しかしそれをやってもらえないのであれば、タグの読者向けに発言の問題点を示し続けるだけだ。